99年秋に「コミュニティ ミュージックをつくる」という拙著(音楽之友社刊)を発売していただいた。メイン タイトルは「文化会館の聖母<マドンナ>たち」で、文化会館を基軸に市民文化の創造的な活動の発信記録を本にしたものでした。その真の狙いは市民自らが音楽創造・表現・評価ができて、文化の自給自足から様々な価値観の認識・交流が叶うことの意味と手だてにありました。
一流の芸術を鑑賞することは素晴らしいことです。人の価値観は様々だから一概には言えませんが、消費としての文化と、創造の文化、保護・育成する文化は同等で、それらの結びつきの手だてを持っているのが文化施設でなければならないと思っていました。
全国には地元市民の創造的な活動を当然の様に育成しながら、世界の一流芸術に触れる機会を確保している文化施設が多くなってきました。芸術も元はコミュニケーションで、コミュニティ ミュージックの育成が根源になければならないのだと思っています。その実践と成果は少しでも仲間と築き上げて来ましたが、当時は殆どの音楽関係者・文化施設の人びとは何のことか全く理解出来ていなかったようでした。これからはそれが当然核になると私は思っています。