演奏会で、楽器を持参した演奏者が登場する。ルーティンでチューニングの意味も含めて音を一つ二つ出すことがある。実はその一つの音で次に表現される全ての世界が予告されている。
一節(ワン・フレーズ)演奏する。冒頭の音よりも、フレーズの尻で技量が分かる。コンクールだとそれで本当は点が出ていることがある。
音そのものの優れた世界や、フレーズの歌い方一つでその演奏者の技量が出ている。テストで(観客の後ろを向いて)音を試演しても、本番以上の世界が既に語られている。演奏する前の佇まいで音楽曼荼羅が聞こえているわけだ。だから序の段階で、熱してクライマックスに達する前に、勝負あったということになる。ステージの上では全てがアートなのだということだ。