実りの秋だ。農作物・果物、漁業の養殖から遠洋漁業の冷凍品まで、様ざまな生産物の取り入れが始まったが、いつの時代も、どの地域でも、その丹精込めた成果物を盗むヤツがいる。最近では牛や豚など、大型動物の盗人までいる。

 盗むヤツの神経は分からない。しかし盗まれた人びとの悔しさと苦渋だけは分かる。私も子どもの頃から何度も経験した。

 一回目は穀物を盗まれた。獲れた日の夜にベランダに置いてあったものを全部盗まれた。その後警報ブザーを付けて穀物を保管したが、鳴ったことはなかった。

 朝、鶏が鳴かない。鶏舎に行ってみると一羽もいなかった。一晩で全部盗んだヤツがいた。随分経ってから若い男が捕まって、現場検証に来たが、何百羽も盗まれたたショックは大きく、父は養鶏を辞めてしまった。我が家に犬はいたが一回も吠えなかった。

 栗やスイカも被害にあった。子どもがイタズラで一個盗むのとは違う。毎日消毒し、枝を剪定し、肥料をやっては、熟成を待つ日々の最後に盗まれる・・・

悔しさは筆舌に尽くしがたい。子ども時代のこの感覚は絶対に抜けないでいる。