リサイタルには固定イメージがある。歌のリサイタルに絞って話そう。
誰もが想像するリサイタルは、二千人のコンサートホールは別格として、数百人の座席数のホールで、男性は燕尾服、女性は結婚式のようなロングドレスで、90分前後のレパートリーを歌う会だろう。
夢のようなひと時を共有できるスペース・・・と思っているのはステージで歌う人。義理と人情で成り立っているコンサートがほとんどだ。30分以内なら我慢できるところだが、人の迷惑を考えないで、自分の価値観を多くの人びとに押し付けたい人には、なかなかそのヘンを気付くことが少ない。
今はステージの上で歌いまくり、拍手喝采を糧にすることは、時代錯誤だと言える。勉強の成果を発表するには時代の空気を読んだ方がいい。質のいい情報がメディアから日常的に確保できる時代に、スターの真似をする価値は薄い。
「ひろば」でいい。サロンや(許可を貰って)ロビーでもいい。持ち運ぶ可能な伴奏楽器か、パソコン音源でもいい。五人でも十人でもいい。自分の歌はオープニングに1曲。後半オハコを1曲。フィナーレに1曲。アンコールがあればもう1曲で十分だ。回数を重ねて「また聴きたい、一緒に歌いたい」人が増えていけば、ステージでの交流もあるだろう。
その3曲プラス1曲の合間に、参加者と歌うこともできる。主役の歌い手が「聴き手」になることや、同じ歌う仲間になってコミュニケーションをとることが社会活動としてならば大切なのだ。「雲の上の人」になって聴かせるだけがいいわけではない・・・というアイディアを話すと、歌う人は飛びついて賛同する。しかし結果は切符を売って、スポットを浴びて2時間も歌いっぱなしの企画になってしまう。何かヘンだ。