45年前に音楽雑誌に私が書いた内容は今も変わっていないようだ。
四年制音楽大学だけでなく、専門学校、短期大学を含めると、年間1万人以上の人びとが音楽を得意とした職業につくことが可能な学習を得ている。ところがほんの一部の人を除いて、それを生かすことなく卒業後は特技を眠らせたママの生活をしている。
音大の教育の柱は、優れた次世代を担う人材育成である。その核がピアノ・声楽・器楽の演奏に於ける、より優れたステージを目指すことが根底にある。勝ち抜き戦を生き抜いたチャンピオンを目指していて、その他は学校や自宅での教職に役立てる以外なかなか活躍の場が見出せないでいる。
四半世紀前ごろから、アートマネジメントなどを通して音楽を社会で活かす術が湧き起こってきた。その道の専門家が指導して、卒業生も成果は上げてきたように思われたが、学生が育ててもらう段階で、どう音楽も社会もつくられていて、それを活かすことが出来るかという手立てが弱いママ就職に応用しようとしたため、出口(就職先)も少なく、悪戦苦闘することになったようだ。音楽専門の指導者が旧泰然とした教科に添ったレッスンが中心だったから、無理があったと言える。
教えるということは、自分が学び、理解し納得したなかから次世代に伝えることから始まるし、師弟の人間関係も大切だから、枠を飛び出した応用は挑戦しづらいこともあっただろう。しかし時代や価値観、ニーズはドンドン変わって行くので、新たな創造的音楽活動と社会との結びつきを生み出さないと、異なる価値観の人びととの交流や認識が拡がっていかないように思われる。
音楽も、社会も人間関係も平和も「つくる」という仕組みを根底に置いたシミュレーションは今も昔も変わらず必要だと私は思っている。