20世紀の後半に様々な図形楽譜による音楽作品が世界各地で生まれ演奏されました。今では過去の作品や新たな図形楽譜の作品が演奏されることは少なくなりました。五線紙に記された音楽の方が再現しやすいのかもしれません。

 本 Webサイトの表紙は拙作の図形楽譜です。「スカイプロズム」「リンの詩」をデザインしたものです。私は気が付いたら図形楽譜でもたくさん音楽を発表してきたひとりになったようです。自慢ではありません。キケンな実績なのです。今まで誰からも褒められたことがありません。むしろ演奏家や作曲家と友だちになれない要素を持っているようです。再演してくださった演奏家を除いて共通の苦言を聴き続けてきました。「私は音楽を頼んだのに絵を描いてきた」。そして仲良くなれたのは子どもさんたちが多かったようです。音がルールのなかで、そのルールも自分たちでつくれる、自在な音楽を生み出すことが五線譜で記された音楽より面白く楽しめたからです。

 「万華譜」も同じ原理ですが、「スカイプリズム」など音が空間に浮いていて、演奏者が見る(感じる)角度によって音の存在が変わってきて、その感じた音たちと触れ合うことがいいのですが、五線譜に書かれた音を忠実に演奏することの名人諸氏には苦手だったようです。例をひとつ「スカイプリズム」で。三角錐になっています。その△面に音を指定します。三面の内の一面(一辺)を先ず指定します。ドとソにしました。するとそこから三角錐の中を見るとひとつの音がミの付近に浮かびます。もう一面は前述した面のひとつドとオクターブ上のドとします。するとこの面から見ると先程の音が ファの付近に見えるかもしれません。三面目の線を今のオクターブ上のドから三度下のラにすると、その面から見た同じ音がシ付近かもしれません。見る面により音の浮遊が変わって来ます。演奏者は三角錐を回しながらピアノで奏でられるドレミ以外の音を含む浮遊している音を紡いでいくのです。作曲者の描いた指定音よりもっと自由な音たちにふれ合える「即興」がそこにあるのですが、演奏者は心配で自分で五線譜に事前に書き込んで練習しています。そこが難しいところで、また評判が悪いのだと思いますが、私は宇宙の星たちがさまざまな「窓関数」で自由に歌っているところが好きなのですが・・・

 誰からも教わらなかったし、次世代の作曲家の誰にも伝えられなかった領域のようです。この種の作曲では親分無しの子分無しですが、しかし全く偶然に生まれたわけではなく、私が最初に和声や作曲を学んだ水野修孝先生からコンセプトを培ったように思っています。