日本で最も古く、国際的につながりのあるクラシック系の作曲家団体「日本現代音楽協会(略称:現音)」の会長職を、08年から5期お引き受けしたことがあった。歴代の会長(旧称:委員長)とは異色な理事(旧称:委員)であった。それは作曲家としての実績よりプロデューサーとしての活動が多かったからだ。しかし立候補制ではないのに多数の理事が推薦してくださった理由は、91年に現音創立60周年記念「東京現代音楽祭」のプロデューサー兼大会事務局長を引き受け、作曲家の活動領域を拡大させたからだろう。当時の大会会長の故・三善 晃先生は大会の副題に「おててつないで花いちもんめ」とあそび言葉を加えて下さった。要は子どもから大人まで、音楽のジャンルも超え、世界の友と交流するコンセプトだったのだ。それは「協創」の原型であり、新たな時代の創造に会員諸氏の支持をいただいたのかもしれない。
作曲家は個人営業で、自作の力で多くの人びとと結び合っていることは今も昔も変わりはないのだ。その団体が作曲を通して世界と文化交流することは当然で、01年には「ISCM世界音楽の日々 横浜大会」が開催された。しかし現代では、それに加えてプロの音楽家(作曲家)が社会の人びとや次世代の子どもたちや、特に社会的な弱者にどうサポートするか問われていて、その活動も大切なのだ。個人だけでなく、団体としての使命が求められているはずなのだ。そこで90年以降の活動を充実すべく、日本でも初めての「音楽教育プログラム」をもつ活動チームを01年以降立ち上げ、学校や社会で活動を開始してきたのである。学校の子どもたちや市民との「協創」が展開していく時代が生まれたのだと思った。