ベートーヴェンの「第九」。一楽章から三楽章まで優れた音楽が展開していく。そして第四楽章で、それまでの音楽を否定して「この音楽がいい」と低弦(コントラバス)で歌い始め、全奏者で謳歌し、それをソロと合唱で拡げて行く。
実にシンプルなメロディーで、誰もが一度で覚えて歌えるメロディーである。
「上を向いて歩こう」という歌が全米でも大ヒットしたことがあり、現代でも名曲として多くの人びとに歌い継がれている。ジャズをピアノで弾いても凄腕の作曲家・故中村八大氏の作曲だったが、何てシンプルなメロディーだろう。初めて聴いた時、私は何故か生意気にも「やられた」と思った。
最近のポップスで複雑に聞こえる歌でも、実にシンプルなフレーズの繰り返しをしている歌が多い。そのシンプルな素材は、しかしどれも同じでなく差異性があるから新しい世界を聴かせて貰うことができる。その新しさをシンプルに受け止めて人びとは歌いつないで行く。
シンプルな素材は可能性をふくらませて幾らでも複雑にすることはできるが、複雑な素材はシンプルにすることは難しい。
古今東西のクラシックの名曲の多くは、シンプルなテーマの組み立てが多い。民族音楽でも同じようなことが言える。
Simple is the best だと思う。