Katsuhiro Tsubonou Official Website. Act 2001~

カテゴリー: 雑感 / MISC. (Page 5 of 5)

文化会館の波動②

 私が文化会館の芸術監督を引き受けさせていただいた頃、「コミュニティー・ミュージックをつくる」という本を出し、企画を実践していた。音楽はプロが聴かせて、聴衆は聴くだけのものではなく、市井の誰にでも個人のオリジナルな音楽を持っていて、それと優れた文化芸術が解け合って人びとは感動するという音楽の基本の話しを提示しただけである。

 もちろん創造的な技術は持っていないことが多い。表現だって上手くない。しかし人びとと技術を超えてつくり合えることが、音楽を理解し、愛し合える原点になる。だから簡単なルールや手だてで「つくってみよう」という能動性が大切だ、という内容だった。それが「音楽づくり」という活動が学校だけでなく、町の何処でもできる活動として考えていたのである。

 文化会館に資金や人が不足しだした今、再度自分たちの「音楽(文化)づくり」が必要とされている。 P ACシステムデアル。三位一体の、三人寄れば文殊の知恵の、文化芸術の創造エネルギーの源というアイディアである。

  Pは文化施設のプロデューサー(本企画の担当者でいい)。 Aはアーティスト(一流の音楽家・音楽教育者などの専門家)。 Cは(市民のなかの文化人、カルチャーの仮称)。 Cは複数で固定しないで、例えばプログラムごとに交代する、などのルールが必要。 Aはオーケストラのトップ演奏家や学校と社会の音楽教育に精通したひと)。これらの人びとの有機的な結びつきで、地元の文化芸術財産と世界の一流人と何が出来て、どう拡がって行くか智恵を出し合うことから始める。

 種蒔きなら、東京のオーケストラ団体が全員で来られなくても、少ない経費で町のなかで、文化施設で、何が出来て生まれてつながるか、そこから始めることができるだろう。文化芸術は「鑑賞」が先ずあるのではなく、コミュニケーションがあって、何かをつくるところから始まるからである。

 次世代の技術向上を願うだけではなく、自力で文化芸術の様ざまなふれ合い方から「ここにしかない」自力を培うことが大切だと思われる。

 

文化会館の波動①

日本全国の約100館ほどの優れた劇場・音楽堂は、各館優れた企画制作の実績が多大な名館になっている。それに準ずる約300館ほども目を見張る独自な地域文化を展開させている。優れた「鑑賞」はもちろん「市民参加」「次世代育成」などの事業も優れた実績を残している。
 約20年ほど文化事業のアドバイザーや視察などの役で、私は全国で望まれる文化会館スタッフと智恵を出し合ったきた。どの文化施設にも地元の文化的な財産が豊富で、それと海外を含む大都市の文化との連携が次の財産を生むと考えたからである。
 そこで「ここにしかない」「ここにもある」プログラムを考え、地域文化の新展開に助力させていただいてきたと思っている。前述した数百館など、市民の声を聴く力もあって、新たなアドバイスなど不要な実力を持っているから、ここでは同類ではない。
 しかし現在どの文化施設でも、新型コロナの影響で立ち往生している。企画が成り立たないからである。そしてこれは序章で、親元の税収が乏しくなれば、予算や助成金はカットされ、人員も整理され施設全体の縮小・廃館まで起こる事態になっている。次年度から次々年度に向かって被害が多くなっていくだろう。
 大規模予算の掛かる企画は難しくなる。マイナス思考でなく、乗り越える手だてを考えなければならない。そこで登場するのは、まず「ここにしかない」企画の推進だろう。会館スタッフ+優れた芸術家やプロデューサー+地元の文化芸術の実力者の三位一体が実力を発揮することになる。地元の知恵者は特定のボスでなく、各分野に公平で「育成」に関心がある人がいい。企画はアマチュア化させるものではなく、種蒔きから様ざまな人びととの「交流」ができることが条件になる。金がない、人がいない、アイディアがない、のではなく、オリジナル誕生に向かった「闘い」を考える事が優先される時期になっている。チャンス到来の季節でもある。

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